どーも!セシモンです。
今回から新しいシリーズを始めます。テーマは「コーヒー豆を育てている国」。世界中のコーヒー産地を一つずつ巡りながら、産地の雑学、豆の特性、そして僕自身がコーヒーマシンのエンジニアをしている目線と今までの経験を交えて紹介していこうと思います。
記念すべき第一弾は、生産量世界一を誇るブラジルです。
まずはブラジルという国について
コーヒーの話に入る前に、軽く国の基本情報から。
ブラジルの首都はブラジリア。実はこれ、意外と知られていないんですが、リオデジャネイロでもサンパウロでもありません。1960年に、内陸開発を進める目的で計画都市として新しく作られた首都で、街全体が飛行機の形にデザインされていることでも有名です。世界遺産にも登録されている、なかなかユニークな都市です。
国土面積は日本の20倍以上、人口は約2億人という南米最大の大国。南半球ではブラジルはとにかく規模がすべて桁違いで、農業大国としてもコーヒーだけでなく大豆やトウモロコシの一大輸出国でもあります。
知名度でいうと、経済・文化の中心地であるサンパウロ(人口1,100万人超、南半球最大の都市)や、リオデジャネイロの方が有名かもしれません。日系人も多く、日系企業も多数進出している国でもあります。この国の広大さと多様さが、そのままコーヒーの産地の多様さにもつながっているんです。
ブラジルはコーヒー生産量、堂々の世界1位。
コーヒー好きなら一度は聞いたことがあると思いますが、ブラジルは150年以上にわたって世界最大のコーヒー生産国の座を守り続けています。世界のコーヒー生産量のおよそ3分の1がブラジル産と言われていて、これはもう圧倒的な数字です。
面白いのは、ブラジルでコーヒーが本格的に栽培されるようになったのは18世紀に入ってから、フランス領ギアナから苗木が持ち込まれたのがきっかけだということ。それがわずか100年ほどで世界一の生産国にまで駆け上がったわけですから、この国の農業スケールのすごさが伝わってきます。
国土がとにかく広いので、コーヒーベルト(コーヒー栽培に適した赤道を挟んだ南北の帯状エリア)の中でも、ブラジルは南半球側でかなり南寄りまで栽培地が広がっているのも特徴です。そのぶん他の産地に比べて季節による寒暖差があり、これが豆の味わいにも影響してきます。
代表的な産地とその個性
ブラジルと一括りに言っても、州によってかなり味の傾向が違います。代表的なところをいくつか紹介します。
ミナスジェライス州 生産量の約半分を占める、ブラジル最大のコーヒー産地です。中でも「セラード」「南ミナス(スールデミナス)」「モジアナ」というエリアが有名で、標高の高い台地で栽培されるため、しっかりとしたコクとナッツのような香ばしさが出やすいのが特徴。日本のカフェでもよく見かける「ブラジル・セラード」はここ産です。
サンパウロ州 ブラジルコーヒーの歴史そのものと言ってもいい場所。かつてはサントス港からの積み出しが主流だったため、「サントス」という名前がブラジル産コーヒーの代名詞のように使われてきました。バランスの取れた飲みやすい味わいが多い印象です。
エスピリトサント州 実はロブスタ種(カネフォラ種)の一大産地でもあります。アラビカ種のイメージが強いブラジルですが、ここではブレンドやインスタントコーヒー向けのロブスタも多く作られています。
バイーア州 比較的新しく開発された産地で、灌漑設備を整えた計画的な農園が多いのが特徴。近年はスペシャルティコーヒーの生産にも力を入れていて、注目度が上がっているエリアです。
ブラジルの有名農園をいくつか紹介
「産地」だけでなく「農園」単位で追いかけると、ブラジルコーヒーはもっと面白くなります。世界のバイヤーやロースターに名前が知れ渡っている、代表的な農園をいくつか紹介します。
Fazenda Ambiental Fortaleza【ファゼンダ・アンビエンタル・フォタレザ】(FAF)/ モジアナ地区 1850年から続く歴史ある農園ですが、2001年にオーナー家族が有機栽培への転換を決意し、名前に「環境の砦」を意味する「Ambiental」を加えて生まれ変わりました。
あの有名なブルーボトルコーヒーさんが2011年からFAFより豆を購入している程!今ではブラジルのサステナブルコーヒーを代表する存在として、世界中のスペシャルティロースターが買い付けに訪れます。家族経営の丁寧な農園です。
Fazenda Rio Brilhante 【ファゼンダ・リオ・ブリジャンテ】/ セラード地区 リオ・ブリジャンテとは「明るい川」という意味。
逆にこちらは、まさに「これぞブラジル」というスケール感の農園。標高1,000m前後の平坦な台地に、コーヒー畑だけで東京ドーム200個分以上という規模で木が並びます。運営グループ全体の所有地は4万haにも及ぶそうで、周囲360度すべて地平線まで自社の土地という、日本の農園のイメージとは全く違う世界が広がっています。
ベラビスタ農園 / 南ミナス地区 標高750〜1,350mというブラジルの中でも高地に位置する農園で、環境に配慮した栽培と各種認証取得に力を入れているスペシャルティ寄りの農園です。ローストナッツの香ばしさとピーナッツバターのような甘みが特徴と評されていて、まさに「ブラジルらしさ」を体現している一軒だと思います。
同じ「ブラジル産」というラベルでも、農園によってここまで背景もスケールも違う。これを知っているとカフェでメニューを見るときの楽しみ方が一段変わってきます。
ブラジル産の味の特徴
酸味が控えめで、コクと甘みのバランスが良いというのがブラジル産コーヒーの一般的な評価です。ナッツやチョコレートを思わせる香ばしさが出やすく、単体で飲んでも美味しいですが、ブレンドのベースとしても優秀。実際、多くのブレンドコーヒーの土台にブラジル産が使われているのは、この「クセがなく安定した美味しさ」があるからです。
精製方法も面白くて、ブラジルは他の産地に比べて「ナチュラル(非水洗式)」や「パルプドナチュラル」での精製が多いのが特徴です。水資源をあまり使わず、天日で果肉ごと乾燥させる方法ですが、これが独特の甘みや果実感を生み出す要因にもなっています。このあたりは以前の精製方法の記事でも触れたので、気になる方はそちらも読んでみてください。
現場で感じたブラジル産の印象、そして今の僕の一杯
バリスタ時代からずっとコーヒーに触れてきましたが、修業先や現場でブラジル産の豆を扱う機会は本当に多かったです。特にイタリアンやフレンチの店で出すエスプレッソのブレンドには、ほぼ必ずと言っていいほどブラジル産が入っていました。理由は単純で、安定感があるから。豆によって味がブレやすいコーヒーの世界において、「いつ飲んでも一定の美味しさ」を出せるのは、実はすごく貴重なことなんです。
そして正直に言うと、最近ドリップで一番よく淹れているのもブラジルなんです🎵
華やかな酸味で押してくるコーヒーもいいけれど、今の自分が求めているのはそっちじゃない。ナッツの香ばしさとチョコレートのようなコク、そして酸味を抑えた落ち着いた甘さ。一杯注ぐたびに、湯気の向こうから静かに景色が沈んでいくような感覚がある。派手な自己主張はしないのに、飲んだ瞬間に部屋の空気ごと落ち着かせてくれる。そんな懐の深さが、今の自分の空間にすっとハマるんです。
グラインダーで挽いたときの香りも、ブラジル産は他の産地に比べてどこか落ち着いた印象があります。派手さはないけど、飽きが来ない。むしろ飲むたびに「今日も変わらずここにいてくれる」という安心感がある。そんな豆だと感じています。
まとめ
- ブラジルは150年以上、生産量世界1位を守り続けているコーヒー大国。
- ミナスジェライス、サンパウロ、エスピリトサント、バイーアなど、州ごとに味の個性が違う。
- FAF、Fazenda Rio Brilhante、ベラビスタ農園など、農園単位で見るとさらに奥深い。
- ナチュラル精製が多く、酸味控えめ・コクと甘みのバランスが良いのが全体的な特徴。
- ブレンドのベースとして、そして自分の落ち着きたい一杯として世界中で愛されている「縁の下の力持ち」的な存在
次回は南米つながりで、ブラジルとはまた違った個性を持つ産地を紹介していく予定です。お楽しみに。

